考察:コロナ禍が物流業界に与えた影響とコロナ後の展望

コロナ禍が物流業界に与えた影響

コロナ禍が物量業界に多くの影響を与えた事は明白です。帝国データバンクによると、B2B貨物の物量の減少は顕著です。

2020年初頭の景気動向指数は明らかに急落し、2020年6月からは徐々に回復していますが、B2B貨物のコロナ禍以前の水準には程遠いのが現状です。

これはB2B宅配便においても同様で、コロナ禍以前の水準に達していません。

コロナ禍がEC業界に与えた影響

商業動態統計によると、2020年度に入って百貨店や小売業が大きく販売額を落とす一方、日本通信販売業界の調査によると、ネット通販の2020年3月以降の販売額は大幅増となっています。

またネット通販の主要各社の販売額はコロナ禍で売り上げを大幅に伸ばしています。

amazonは第二四半期で売上高49%増を達成し、楽天も48%増となっていて、コロナ禍での巣篭もり需要の影響を大きく受けた結果となっています。

コロナ禍が宅配便業界に与えた影響

前述の通り、B2B貨物の物量が伸び悩んでいる一方、ネット通販をはじめとしたネット通販業界は売り上げを伸ばしている中で、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の宅配便大手3社の宅配便取扱量は、消費者の巣篭もり消費の影響を大きく受けて大幅に伸ばしました。

ネット通販等のB2C貨物の増加の影響を受けている事がわかります。

ヤマト運輸・日本郵便はコロナ禍のネット通販配送の影響を受けて輸送量は前年度比で大幅増となっています。一方、B2B宅配が強みの佐川急便はB2B宅配の減少をB2C宅配の増加が相殺し、それでも輸送量は前年度比で微増となっています。

またメルカリやラクマなどのフリマアプリのユーザー増加に伴い、C2C貨物の増加でヤマト運輸・日本郵便の取扱量は大幅に増加しました。

また、興味深い事に、コロナ禍の影響の一つで、都市部において再配達率の削減が見られるようになりました。国土交通省が2017年から継続的に調査を開始して以降、はじめて再配達率が削減されました。緊急事態宣言によりテレワークが推奨され、都市部で在宅率が上昇し、再配達率が17%から8%まで削減されました。これは全体の配送件数が前年度比4%増に相当する数字です。

コロナ後のネット通販配送の形態

コロナ禍の影響で消費者の購買様式が大きく変化したように、コロナ禍で宅配の受取様式も変化しつつあります。コロナ禍以前の対面型配送から、コロナ感染防止を目的とした非対面型配送の浸透が挙げられます。

対面型配送は、印鑑やサインで本人確認をして受け渡す事で、誤配や悪質な未着クレームのリスクを削減する代わりに手間隙をかけていましたが、配達完了の画像を送付するだけでそのリスクが減り、配送完了の効率をあげる事ができるのかを配送事業者側は考慮していく必要がありそうです。

通販事業や消費者も、対面型配送の安心感と置配などの非対面型配送の気軽さを天秤にかけて、今後はコロナ感染防止の目的だけではなく、非対面型配送の浸透による習慣化によって非対面型配送を選択するようになる可能性が高いです。

結果的に宅配業界はネット通販配送の非対面型配送によって、その形態が大きく変化していくことになるでしょう。

コロナ後の物流業界の展望

国内外問わずワクチン接種率が高まると、コロナ禍以前の水準までB2B貨物の物量は回復する事が見込まれています。同時に、B2C貨物はコロナ禍の水準を維持するか、もしくは今後も増加する事が見込まれています。

増加するネット通販の配送に比例して、配達員の確保は今後の重要課題の一つでもあり、そういう意味では貨物軽自動車事業と軽貨物ドライバーの需要の高まりは今後も続くものと思われます。

コロナ禍は、ネット通販の配送を増加させただけでなく、非対面型の配送という効率的で簡素化した荷物の受け取り方が利用される可能性をも高めました。

これまで宅配事業者が強みとしてきた品質の高い配送を維持しながら、ネット通販事業者や消費者が望む配送サービスに対応していく事で、コロナ後の物流業界はさらに発展していくのだと思います。

置配の浸透と比例して、非対面かつセキュリティーが担保される宅配ロッカー設置等、B2C貨物の増加に伴い社会が求める配送サービスの水準に物流業界は対応していかなければなりません。

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